馳足かけあし)” の例文
蒋奇は心得てすぐ疾風陣しっぷうじんを作った。一万の騎士走卒はすべて馳足かけあしでいそいだ。烏巣の空はなお炎々と赤いが、山間の道はまっ暗だった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馳足かけあしで絶壁のはじまで来て、急に底の見えない谷をのぞき込んだ人のように。私は卑怯ひきょうでした。そうして多くの卑怯な人と同じ程度において煩悶はんもんしたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの瑠美子るみこを中心とした三人は、行った時のように、朗らかに笑い興じながら、馳足かけあしあがって来た。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
おおかたこの天気だから見合わしているのだろうと云うのが、みんなの意見なので、僕らがそろそろ歩いて行く間に、吾一が馳足かけあしむかえに行って連れて来る事にした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)