饒舌しやべり)” の例文
映画に出て来る人間が物を云つてれたら、こんなに忘れる事はあるまいとも考へて見る。自分がお饒舌しやべりだからでもあるまいが。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
批評会でお饒舌しやべりした一行も、夜の更けた上に此の世間ばなれのした河上の月光の下で誰も皆おとなしい。数人の芸妓達も皆上品にしてゐる。
月二夜 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おばあさん達は、お湯の中でずゐぶんお饒舌しやべりをしたあとなので、皆黙りこんでこつ/\歩いて行きました。
狐に化された話 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
恐入らせんとて大音に御城代所司代并に御老中の役宅にて喋々べら/\饒舌しやべりし者は此席にゐる罷出まかりいでよ吟味の筋ありと呼はれば山内は最前より餘人よにんに尋んより我に問ば我一言のもとに越前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人にちやほやされるときに限つてしたがるつまらないことや、何かちよいとした氣儘きまゝさへもとがめず、彼女の好きなやうにお饒舌しやべりをさせながら、私は一時間ばかりもさうしてゐた。
「あゝ俺は少し頭を使ひ過ぎる。」さう道助は思つた、で彼は高声にお饒舌しやべりを初めた。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
入口の硝子戸ガラスどに石を投げられたり、圭子が警告されたほど、居周ゐまはりの家へ入りこんでお饒舌しやべりをしたり、又は遠走りをしたり、八飴屋はちあめやの定連であつたりするのは可いとして、圭子の娘として
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
停車場を中心に左右海岸通りに展開して中位な粗末さの宿屋が軒を並べてる、上陸あがると成程お饒舌しやべりな男が扇をバチつかせて松山へは二十分置きに汽車が出るから、ゆつくり休んでつても大丈夫だ。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
饒舌しやべりらしい小女は、お勝手の方から口を出しました。
「うむ、さうすると、俺の方がお饒舌しやべりなのだな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)