食麺麭しょくパン)” の例文
あの大きな風呂敷包を背負って毎朝門前を通った噂好うわさずきな商家のかみさんのかわりに、そこにはまきざっぽうのような食麺麭しょくパンかかえた仏蘭西の婦女おんなが窓の下を通った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
実は此方こっちへの来がけに、途中で食麺麭しょくパン鑵詰かんづめとを買い、風呂敷へ包んでいたので、わたくしは古雑誌と古着とを一つに包み直して見たが、風呂敷がすこし小さいばかりか
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
津田は仕方なしに、ひとり下味まず食麺麭しょくパンをにちゃにちゃんだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
骨の折れた説教の後で、葡萄酒ぶどうしゅを盛った銀のコップ、食麺麭しょくパンの片を容れた皿が、信徒等の間にあちこちと持廻られた、葡萄酒はやがて基督の血、麺麭はやがて基督の肉だ。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)