顔容かおだち)” の例文
旧字:顏容
『ハテナ。あのお女はどこかで見た様な気がするが……?あの顔容かおだち、あの眼ざし、あの表情は確かに見覚があるが、ハテどこだったろう?』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
わたくしは又ぎよつとして振返ると、わたくしの左の方にならんでゐる十五六の娘——その顔容かおだちは今でもよく覚えてゐます。
女は薄い髪の毛を櫛巻くしまきにしていた。美人という程ではないが、ふだん着のままでいても、ちょっと魅力のある顔容かおだちで、どこか世間馴れた風があった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まったくお富の言う通り、飯田の御新造の顔容かおだちはしばらくの間にめっきりとやつれ果てて、どうしてもただの人とは思われないような、影のうすい人になっておりました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
屋敷へふだん出入りする者の眷族けんぞくにも、こういう顔容かおだちの娘は見あたらなかった。身許不明の此の娘がどうして此の屋根のうえに登ったのか、その判断がなかなかむずかしかった。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その木像の顔容かおだちや風俗が日本の少年であるということが、大いに彼の注意をひきました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まゆは濃く、眼は大きく、口もとはきっと引締まって、これに文金ぶんきん島田のかつらをきせたらば、然るべき武家のお嬢さまの身代り首にもなりそうな、卑しからざる顔容かおだちの持ち主であった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)