おとがい)” の例文
彼女の頭に映っていたかつての彼の男々おおしく美しかったあの顔は、今は拡まったくぼみの底に眼を沈ませ、ひげは突起したおとがいおおって縮まり、そうして
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
千早振ちはやふ神無月かみなづきももはや跡二日ふつか余波なごりとなッた二十八日の午後三時頃に、神田見附かんだみつけの内より、塗渡とわたあり、散る蜘蛛くもの子とうようよぞよぞよ沸出わきいでて来るのは、いずれもおとがいを気にしたまう方々。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と包ましやかに、薄藤色の半襟を、面痩おもやせた、が、色の白いおとがいおさえて云う。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)