隻足かたあし)” の例文
私はかがんでそれを拾ってやって、後をり向くと、女も最後の石段に隻足かたあしをかけて揮り返ったところであった。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蛇は蛙の傍へ往くと鎌首をあげて、赤い針のような舌をちらちらと一二度出した後に蛙の隻足かたあしをくわえた。
山の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新三郎はこんなさまを人に見られてはと思ったが、一条路で他に避ける処もないので、田の中へ隻足かたあしを入れるようにして、駕籠をやり過ごそうとした。駕寵の垂は巻いてあった。
八人みさきの話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
我が党の足痕あしあとへは、もう新しい世界の隻足かたあしが来ている、吾輩の魂も、これから永遠の安静にるべき時が来たから、最後のげんとして、君にまで懺悔ざんげして置きたいことがあってやって来た
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)