隻方かたほう)” の例文
彼女は舌を出して障子の紙をねぶり、そっと穴を開けて隻方かたほうの眼をそれに当てた。そして、老女は其処に怪しい物を見つけた。
猫の踊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
洋服の男は独りでこんなことを云ってから、またテーブルの上を叩いて思いを遠くの方へせるようにしたが、その拍子に隻方かたほう赤濁あかにごりのした眼がちらと見えた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは斑紋はんもんのあざやかなたくましい虎であったが、隻方かたほうの眼が小さくすがめになっていた。
虎媛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
左のほうの老僧と小僧のいる方の壁にも壁画があって、獅子しし麒麟きりんのようなものが画いてあったがそれも隻方かたほうの眼が潰れていた。武士はますます驚いたがいて気を張って老僧を見た。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)