阿容々々おめおめ)” の例文
昇如き者の為めに文三が嘲笑されたり玩弄されたり侮辱されたりしても手出をもせず阿容々々おめおめとして退しりぞいたのを視て
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「返す返すも舌長し、折角拾ひしこの鳥を、阿容々々おめおめ爾に得させんや」「しゃツ面倒なりかうしてくれん」ト
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
この中にも書いてある、まるで何だ、親か、兄弟にでも対するやうに、恐ろしく親切を尽してつてな、それで生命を助かつて、阿容々々おめおめと帰つて来て、あまつさへこの感状を戴いた。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これを廝に告げんとすれど、悲しや言語ことば通ぜざれば、かれは少しも心付かで、阿容々々おめおめ肴を盗み取られ。やがて市場に着きし後、代物しろもの三分みつひとつは、あらぬに初めて心付き。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
お勢が顔を視ている……このままで阿容々々おめおめ退しりぞくは残念、何か云ッて遣りたい、何かコウ品のい悪口雑言、一ごんもとに昇を気死きしさせる程の事を云ッて、アノ鼻頭はなづらをヒッこすッて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
聴水ともいはれし古狐が、黒衣ごとき山猿に、阿容々々おめおめ欺かれし悔しさよ。かかることもあらんかと、覚束なく思へばこそ、昨夕ゆうべ他がを訪づれて、首尾怎麼いかなりしと尋ねしなれ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)