ばつ)” の例文
が、もう幕府の所有金塊はほとんど消費しきっていた。しかし、吉保を初め、かれらのばつは決して行きづまらなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを要約していう時は、金と女とを進物にして、ばつをつくったということになる。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この悪政で、勘定奉行の萩原重秀はぎわらしげひでは、有名になった。柳沢ばつと、大奥の費用と、将軍家の身辺には、ふたたびつかいきれない程なものが、黄金蔵おうごんぐらに積まれた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわゆる奸臣のばつにも、正義をたてとする血気な一部にも、また、いかだ組にも、老公は真実、心の奥で
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばつの争いだの、意地わるい嫉視しっしだのがあって、日蔭で冷ややかにひねくれた眼と眼が、絶えず、行儀作法の正しいなかで、根強いのろいと闘いを交わしているのが、ほとんど
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、幕府をめぐる北条ばつや大江広元などの、いわゆる政治家肌な人たちの中では、義経が、戦時同様な威力をもって、京都守護の任にあることは、何かにつけ都合が悪かった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将軍の大功は天子もみそなわし、庶民もよく知るところですが、朝廟の旧殻きゅうかくには、依然、伝統やばつや官僚の小心なる者が、おのおのちがった眼、異った心で将軍を注視しています。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とのみで、栄華のばつは一も与えなかった。そして平家人の頭には、何年たっても
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閥外ばつがいの人間を遠ざけるから、範綱などは、めったに伺候しこうすることはなかったのであるが、近ごろはまた、法皇のお心もちが少し変って、あまりな平家ばつに、眉をひそめられることが多く、ときどき
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)