門葉もんよう)” の例文
弁持べんもち十二——というのも居た。おなじ門葉もんようの一人で、手弁で新聞社へ日勤する。月給十二円の洒落しゃれ、非ず真剣を、上杉先生が笑ったのである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
役者絵はかくの如く菱川師宣より国貞国芳及びその門葉もんようの小画工に至るまで江戸二百余年を通じて連続したり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「さなくば、仰せられても、さしつかえおざるまい。かほどまで、平家の門葉もんようばらに、みにじられ、無視されても、腹のたたぬやつは、うつけか、畜類ちくるいでおざろうぞよ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤銅しやくどう撞鐘つきがね一口を与へて、御辺の門葉もんように、必ず将軍になる人多かるべしとぞ示しける。
平家の門葉もんようの端くれへけられてしまうかも知れない——という疑心暗鬼ぎしんあんきも手つだってくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明和七年春信歿ぼっするやその門葉もんよう中より磯田湖龍斎いそだこりゅうさい出で安永あんえい年代の画風を代表せり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「まして、悪い噂がある折じゃ。姫がどう望んでいようと、家名には換えられぬ、一族門葉もんようの者が、挙げて、世間から非難されても、かまわぬという決心ならやむを得ぬが」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
譜代ふだいの側臣四十六人。すべて北条氏の門葉もんよう二百八十三人、みな差し違えたり、腹を切った。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康様の御助力にすがるほかは、秀吉に野望あるがために、亡き信長公の門葉もんようは、自然、滅亡のほかはないと、泣きこんで来たために、わが徳川家は、義を唱えて起ったものを。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふウム……小賢こざかしい。——王道を暗うし、民人に苛政かせいをしき、徳川門葉もんようのおごりのほか何ものも知らぬ幕府の隠密となって、その小さなほこりをば、おぬし、俯仰天地ふぎょうてんちにはじぬ心事とするか」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)