錯乱さくらん)” の例文
旧字:錯亂
さっき、二人の同僚に向っても、自分は、落着いている、決して、逆上してはいない——と広言したが、やはり心が錯乱さくらんしていたのか。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒がねのぬかはありとも、帰りてエリスになにとかいわん。「ホテル」を出でしときのわが心の錯乱さくらんは、たとえんに物なかりき。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
人騒がせな博士の失踪は、精神錯乱さくらんの結果でもなく、いわんや海を越えて和平勧告わへいかんこくに行ったものでもなかった。
あれは恋などと云うなまやさしいものではない。あれはもはや狂気だ! 恐るべき精神の錯乱さくらんなんだ! そうかと思うと今度は、また行方ゆくえも分かぬ虚空の彼方かなたに眼をやって……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
またよく考えて見ると精神の錯乱さくらんして居る人に遇って見たところが別段頼みになる訳でもないから、こりゃ一つセラ大寺へ直接じかに出掛けて行って、それからまあ仮入学を許してもらい
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
というのは、彼は週期的に精神錯乱さくらんを起す不幸な先天的欠陥があって、そのたびに異常に突きつめた世界へ走り、幾日もねむらず考え又書きつづけ、その手記を私の所へ送って自殺を計る。
篠笹の陰の顔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
奇怪な錯乱さくらんのために、おばさんを凝視ぎょうししていた私の眼ぶたがかっと熱くなった。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
錯乱さくらんしている人間、を示している。
寝不足のうえにも畏怖いふを加えて、対座の間も、まったく錯乱さくらんのていだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、錯乱さくらんし始め
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)