鉾杉ほこすぎ)” の例文
片側は土手、片側は鉾杉ほこすぎ小暗おぐらい林で、鳥の声もかすかである。御手洗みたらしの水の噴きあげる音が、ここまでかすかにひびいてくる。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
寒さに焦げた鉾杉ほこすぎや、松の木が、その山々の線を焦茶いろにいろどっているところへ、大和絵のような春霞が裾の方をぼかしている山のかさなりを見ていると
山の春 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
向いの寺の鉾杉ほこすぎに風が鳴り出して、まだ明りの漂うている部屋の中に何の物音もなかった。女は手鏡で顔のつくりをなおしかかると、二階あたりの階段をみしりみしりと上ってくるものがいた。
三階の家 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
薄黄の傾斜面と緑の平面、平面、平面、鉾杉ほこすぎの層、竹藪、人家思いきり濃く、また淡くかす畳峰じょうほう連山、雨の木曾川はその此方こなたの田や畑や樹林や板屋根の間から、とつとして開けたり離れたりする。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
築山つきやまのむこうに、鉾杉ほこすぎが四五本ならんでいて、そのむこうに、ぼんやりと灯影ほかげが見える。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鉾杉ほこすぎむら
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)