鉢伏はちぶせ)” の例文
藁鞋わらぐつはいてゆく里人を車窓より見まもりゆくうちに鉢伏はちぶせ山右手に現れ、桔梗ききょうが原に落葉松からまつ寒げに立っていた。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
乗鞍岳の右前にはここより少し高い鉢伏はちぶせ山が尨大な山容を横たえて、や展望を遮ぎる。
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
きのう、清盛の雪ノ御所をたずねて、麓まで行った会下山えげさんは眼のまえだ。摩耶まや鉄拐てっかい鉢伏はちぶせなど、神戸から須磨すま明石あかしへかけて、市街の背光をなしている低山群も、山姿すべてあざらかである。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諏訪の盆地は隠れて見えず、鉢伏はちぶせ立科たてしなが後ろからのぞき、伊奈いな筑摩ちくま山巒さんらんが左右に走る。遠くは飛騨境ひだざかいの、槍、穂高、乗鞍等を雲際に望むところ。近くは犀川さいがわと、天竜川とが、分水界をなすところ。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)