野梅やばい)” の例文
書院前しょいんまえ野梅やばいに三輪の花を見つけた。年内に梅花を見るはめずらしい。しもに葉をむらさきめなされた黄寒菊きかんぎくと共に、折って小さな銅瓶どうへいす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これも數へれば七八本もあるであらうが多くは野梅やばいである。花の小さい、實の小さい、枝のこまかな梅である。豐後梅、紅梅も一本宛あるにはあるが。
たべものの木 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
幼い頃見た写真がすぐ思出おもひだされた。けれど想像とはまるで違つてゐた。野梅やばいの若木が二三ぼん処々ところ/\に立つてるばかり、に樹木とてはないので、なんだか墓のやうな気がしなかつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼女の「野崎村」はつやにとぼしかったといえるかも知れなかったが、野梅やばいのようなお光と、白梅のような久松と、うす紅梅のお染とがよく語りわけられて、そのうちにもお染はともすると
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)