醇々じゅんじゅん)” の例文
そのうちには新酒の蓋あけのころともなって秋の深さは刻々に胸底へにじんだ。倉一杯にあふれる醇々じゅんじゅんたる酒のもやは、ければあわや潸々さんさんとしてしたたらんばかりの味覚に充ちよどんでいた。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
君は少しも顧慮こりょする気色けしきも見えず醇々じゅんじゅんとして頭の悪い事を説かれた。何でも去年とか一度卒倒して、しばらく田端辺たばたへんで休養していたので、今じゃ少しは好いようだとかいう話しであった。
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ともすると、その草雲にさえ、斬ってかかりそうな眼をしている十一名を前に並べて、彼は、醇々じゅんじゅんと説きだした。彼の王室を思うの熱情と、大義を説く懸河けんがの弁は、画家早雲ではなかった。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)