遅蒔おそま)” の例文
旧字:遲蒔
堅気になるのは遅蒔おそまきでござんす。ヤクザ渡世の古沼へ足もすねまで突ッ込んで、洗ったってもう落ちッこねえ旅にん癖がついてしまって、何の今更堅気になれよう。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
で俺は今日から宗旨しゅうしを変えて、遅蒔おそまきながら左膳を真似て殿にお太鼓をたたくつもり、心の変った俺にとっては、石地蔵のようなそちはかえって邪魔というのじゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
追従して、遅蒔おそまきながら日蓮上人の研究をはじめたことは、君も御存じの通りです
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、海老床の若い者や藤吉部屋の勘弁勘次や、例の近江屋の隠居なぞが世話人株で、合点長屋を中心に大供子供を駆り集め遅蒔おそまきながら、吉例により今日は品川へ潮干狩りにと洒落こんだのである。
が、あなたからは一言も看板のお話しはなさらないし、又当方から申上げるのも失礼と存じてそのまま、只今まで過ぎて終いました。遅蒔おそまきながら従兄に代りまして、改めて私から御礼申上げます。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
平次はすぐ駆けつけました、が何もかも遅蒔おそまきです。
そこで、兵部重清も、もともと深くこがれた仲だから、それが菩提ぼだいの種となって出家を遂げた。つまり、新家庭を抛棄して、出家入道の身となったのは、遅蒔おそまきながら朝霧の純情に殉じたものだ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)