遅滞ちたい)” の例文
そう思いながら、三十ヶ所を越える市営建造物の清掃を遅滞ちたいなく行うことはなかなか容易なことではなかった。毎度、喧しく云われ通しであった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
どの女房たちも遅滞ちたいなしに集まって来て、いずれも年の若い玉藻に敬意を表しているのを見ると、忠通はこの頃におぼえない愉快と満足とを感じた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かりに五十日や百日おやすみでも、決して時務に遅滞ちたいはいたしませぬ、諸大名も案じています、どうぞ充分御静養を取られますようにと、さすがもう世嗣よつぎ嫡男ちゃくなんらしく自負して言った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども一語の遅滞ちたいもなく、滔滔とうとうと述べはじめる。
花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
遅滞ちたいせずに、すぐこの便船で出立しゅったつせい
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)