連鎖れんさ)” の例文
軽視の風がある楠木正成くすのきまさしげも、赤坂から千早ちはやへの築城を完了し、金剛山一帯は、今やひとつの連鎖れんさ陣地をなして来たともつたえている。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは何となく信じ難い、変てこな事実であった。空漠くうばくたる五ヶ月間が、犯罪動機と犯罪そのものとの連鎖れんさを、ブッツリ断ち切っていた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
久助君のたましいは、長い悲しみの連鎖れんさのつづきを、くたびれはてながら旅人たびびとのようにたどっていた。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
二人の眼はじっと遠ざかり行くメェフラワァ号の最後の影にそそがれて居る。メェフラワァは故国との最後の連鎖れんさである。メェフラワァの去ると共に故国のえんは切れるのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「自己は過去と未来の連鎖れんさである」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その仲にした格太郎、——と、こう考えてくる時、人間の連鎖れんさ、連環のつくるふかい一線が人生をつき抜いているように感じられる。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう二大敵国をめぐって、それに連鎖れんさする山陰の波多野はたの一族や、播磨の別所や、伊丹の荒木村重などの群れが、兀然こつぜんと、いまはその敵性と一環の聯絡とを
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美作の菩提寺ぼだいじ城には、これも尊氏がのこしておいた山間部隊がいたし、また備前には石橋和義かずよし、田井、頓宮とんぐう、内藤の一族もあって、かたく連鎖れんさ防禦をき、すべて義貞の前に
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)