途惑とまど)” の例文
赤羽主任は、殆んど迷宮に途惑とまどった人間のように、はなはだしく焦立いらだちながらも、決して検証をおこたらなかった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あわてた視線が途惑とまどって、窓辺まどべの桜に逸れました。私はぞっとしました。その桜の色の悽愴せいそうなのに。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
昼でもあまり暗いので、鴉も途惑とまどいをしたらしい、ねぐらを急ぐように啼き連れて通った。
半七捕物帳:06 半鐘の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恐らく、暗やみで途惑とまどひし、右往左往したやり場のない興奮がはけ口を見出しかけたからだらう。男は、はじめの滑稽な様子にひきかへ、今案外な落ちつきと鋭い怒気を見せてゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)