逃散ちょうさん)” の例文
すでに城兵の大部分を逃散ちょうさんさせたあとなので、武器だけはおびただしく残っている。一弾放っては、またほかの鉄砲を取って撃ち、使い捨てに撃ちつづけていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、苦しくって堪らねえから、村を逃散ちょうさんしてどこぞへ落ちのびて行くのも罪になるんだ、いてもわるし、動いても悪し、立って退けばまた悪い、百姓というものは浮む瀬がねえ
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
城兵は城兵を疑い、共に防ぐ味方でありながら、味方同志が恐れ合って、敵をよそに同志討ちを演じ、果ては、城をすてて、思い思いな口から逃散ちょうさんし出した。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城下の大町人からは、借上げられるだけ借りてしまい、町人といわず百姓といわず、関所さえなければ、みなこの餓鬼がきの領地から逃散ちょうさんするであろうと思われた。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
だからいまや海に陸に逃散ちょうさんする離々りりたる敵影を見た公卿たちは、この習例をよい口実に
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな人物に城主になられては、わたくし達は他国へ逃散ちょうさんするしかないともしるしてある。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうも困りました。私を意気地ない城主と見限ったものか、城中の秩序がこのところゆるんでいるので、部下の兵が、勝手を振舞い、他国へ逃散ちょうさんする兵も多くて弱っておりますが」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう逃散ちょうさん流民るみんが、将門の豊田郷にも、おびただしく、入りこんで来た。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう聞えるや、全軍、なすことを知らず、早くも逃散ちょうさんする兵さえ続出した。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)