軸木じくぎ)” の例文
と大江山課長は叫んで、燐寸の箱を開いてみると、なるほど不思議にも燐寸の軸木じくぎは半分ほどしか入っていなかった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼はそれをポケットから取り出して、軸木じくぎの数を調べた上、その一本をシュッとすった。たちまちやみを破る赤い光。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ならはオークの代用に輸出され、エゾ松トヾ松は紙にされ、胡桃くるみは銃床に、ドロはマッチの軸木じくぎになり、樹木の豊富を誇る北海道の山も今に裸になりはせぬかと
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
七五 離森はなれもりの長者屋敷にはこの数年前まで燐寸マッチ軸木じくぎ工場こうばありたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
くわを振りあげて、自分の老齢ろうれいと非力を嘆じたわけだが、ともかく掘った。腕はしびれるようにつかれ、地にして休息した。隣家の庭のひのきに火がついて、マッチをすったあとの軸木じくぎのように燃え果てる。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
水におぼれたのかと、マッチを振って、あちこち見廻す内に、悲しや軸木じくぎが燃え尽した。しかも、水は刻々に膝を没し、已に腰に及ばんとしている。妙子を探しているいとまはない。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)