転封てんぽう)” の例文
後に再び川越に転封てんぽうされ、そのまま幕末に遭遇した、流転の間に落ちこぼれた一藩の人々の遺骨、残骸ざんがいが、草に倒れているのである。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家康が濃州のうしゅう金山かなやまの城主森忠政もりただまさを信州川中島に転封てんぽうしたおり、その天守閣と楼櫓やぐらとを時の犬山城主石川光吉に与えた、それをあくる年の五月に木曾川をくだしてこの犬山に運び
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
大阪冬の陣の媾和には、初め家康から、一、浪人赦免、二、秀頼転封てんぽうの二条件を提議し、大阪方からは、一、淀君質として東下、二、諸浪人に俸禄を給するために、増封の二条件を回答した。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これらは国持大名の転封てんぽうのなかった場合であるが、中以下の諸侯の江戸三百年間に、何回となく引き越しをした家においては、藩士自らがすでに家の根元を忘却したものも少なくないことであろう。
家の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)