距離へだたり)” の例文
その結果は、時としてはかえって、これまで折角近づいていた距離へだたりを遠くし、その間の溝を深くしたような嫌いのある場合がないではありません。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
眼光は、紙背に徹するぞよ! ……嘘と思わば証拠を挙げようぞ。……汝、今、紙帳より一間の距離へだたりを持ち、正面より側面へ移ったであろうがな。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
頭と口とは大分だいぶん距離へだたりがあるので、頭では容易に糊口くちすぎの出来ない世の中だが、鼻は直ぐ近所にあるので、口を養ふのには都合が善かつたものと見える。
親戚故舊は垣一重道一筋、重い足にもさして困難でない程の距離へだたり、殊に新宅の小父さまは快活洒落の人で、四十年前の四國遍路のごときは面白くきいた旅行談の一つでありました。
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
必ず例の洋杖ステッキ聯想れんそうしたものだが、洋杖が二人をつなぐ縁に立っていると解釈しても、あるいは二人の中をく邪魔にはさまっていると見傚みなしても、とにかく森本とこの竹の棒の間にはある距離へだたりがあって
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
したがってまずもってこれが改善に尽力し、一般世間との間の距離へだたりを少くしようとしたのは、適当なことであったと申さねばなりません。差別される者も、当初はじめはむろんこれを歓迎しました。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
連翹れんぎょうすももの花で囲まれた農家や、その裾を丈低い桃の花木で飾った丘や、朝陽を受けて薄瑪瑙色うすめのういろに輝いている野川や、鶯菜うぐいすなや大根の葉に緑濃く彩色いろどられている畑などの彼方あなたに、一里の距離へだたりを置いて
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)