足端あしさき)” の例文
女はビンを持って二度目のしゃくをした。それと同時に女の二つの足端あしさきが右の足首にからまるのを感じた。謙作はまぶしそうに眼を伏せた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
暗い中から驟雨ゆうだちのような初夏の雨が吹きあげるように降っていた。道夫は傾斜こうばいの急なこみち日和下駄ひよりげた穿いた足端あしさきでさぐりさぐりおりて往った。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
やわらかな女の足端あしさきがその右の足首にふわりとさわっていた。謙作はその足をのけるのが惜しいように思われた。謙作はそうして鉢の花に眼をやった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新一はその墓場の中を彼方此方と歩きながら、もしや血が落ちていはしないかと見て廻ったが、足端あしさきにこぼれる露があるばかりで色のあるものはなかった。墓の前に植えつけた桔梗の花も見えた。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)