賦役ふえき)” の例文
今の人は百姓一揆も知らず、天馬、手振りの賦役ふえきの激しさも知らないが、明治生れの私には、人ごとならず実感を伴うのである。
銭形平次打明け話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ここ年々の合戦つづきに、倉廩そうりんの貯えも、富めりとはいえないし、百姓の賦役ふえきも、まだ少しも軽くはなっておらない。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その途筋みちすじでは駅馬えきばを徴発して来ますので、その駅馬なるものはその地方の賦役ふえきとして必ず徴発に応じなければならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しかし、蕃人たちは既にそれよりさき、埔里ほり武徳殿や、付近の桜温泉の新築やに賦役ふえきを命じられている。引きつづいて新しい賦役が与えられたことに不満である。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
町人並びに近在のものは賦役ふえきつかわされ、海岸の人家も大方はうちつぶして諸家様のお堅め場所となり、民家の者ども妻子を引き連れて立ち退き候もあり、米石べいこく日に高く、目も当てられず。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幕府の誅求ちうきうがひどくなり、町人百姓の金を持つて居る者は、賦役ふえき冥加みやうが金、御用金などの名儀で、返して貰ふ當てのない金を公儀に納めさせられるので、太左衞門は一生の智慧を絞つて