賜暇しか)” の例文
一人は賜暇しかで帰っていた若い陸軍将校で、もう一人はオクスフォード大学の学生で、ちょうど大学から帰ってきたばかりだった。
変装をしたって仮面をかぶったって、賜暇しか中のアタッシェか、近衛このえの少尉か何かのようななりをしたって、だめなのです。
そうして、きのう私にむかって、病気賜暇しか願いを送らなければならないと言った。そんなものは、まぼろしの仲間をのがれるための願書ではないか。
「ええ、くそいまいましい。今日ではや七日目。妻の急病ととなえて、賜暇しかはいただいたものの、禁軍への届けもあれきり……。こりゃどうしたものだろうな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賜暇しか帰朝中のヴェルトネル駐仏大使らの一団が、葉巻シガーをくゆらして酒杯グラス片手に、賑やかに笑い興じていた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
午後からは賜暇しかを願ってあり、そのため、仕事はまえから、早く片づくように、手順がつけてあった。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
若い将校は、キツチナアが上機嫌な折を見計らつて、また以前の賜暇しか問題を持ち出した。
彼は賜暇しかを利用して外遊して、パリにたくさんある公営の賭博場へ行って運試しをやろうと考えた。ところが、そんな面倒なことをするまでもなく、彼にとっていい機会が到来した。
氏は目下賜暇しか帰朝中で東京にいるが、明後日の東洋丸で帰任することになっている。君も知っての通り米国娘と婚約中なので、お土産に素晴らしいダイヤを銀座の天華堂てんかどうから買ったんだ。
鳩つかひ (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
おれは賜暇しかを得てシムラに来ているジャック・パンセイだ。……シムラに来ているのだ。来る日も、来る日も、平凡なシムラ……。だが、おれはここを
ふだんは二日づめの一日休みであったが、この土用中は、交代に七日ずつの賜暇しかをもらっていた。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにもかかわらず医師のほうでは妙に大事をとり、初め五七日といったのを倍にし、次いでもう暫く、この月いっぱいというように延ばしていた。賜暇しかが出たのはそのほうから進言でもあったのだろう。
落ち梅記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
三年前に長い賜暇しか期日が終わったので、グレーヴセントからボンベイへ帰る船中で、ボンベイ地方の士官の妻のアグネス・ケイス・ウェッシントンという女と一緒になったのが
郷里のある者は、郷里へも帰れるが、それは三年に一度しか、賜暇しかされない規則である。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
供奉ぐぶの一員として、恐懼きょうくにたえませんが、ただいま家より急な使いがございまして、妻が急病の由、告げまいりました。家族とては召使のほか、幼児一名あるのみ。数日の賜暇しか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やまいのため、しばらく賜暇しかを願って、京都へ療養に赴く」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)