貨殖かしょく)” の例文
想うに貨殖かしょくに長じた富穀と、人の物と我物との別に重きを置かぬ、無頓着むとんじゃくな枳園とは、その性格に相容あいいれざる所があったであろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
旧幕時代には裕福ゆうふくだった上に、明治になってからも貨殖かしょくみちが巧みだったと見えて、今では華族中でも屈指の富豪だった。
糜竺びじくは東海のというところの人で、先祖以来、貨殖かしょくの道にけているので、家には巨万の財をたくわえていた。
父は主計官としてだいぶ好い地位にまでのぼった上、元来が貨殖かしょくの道に明らかな人であっただけ、今では母子共おやことも衣食の上に不安のうれいを知らない好い身分である。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
久秀は六十八歳にもなっていたが、むかしから貨殖かしょくさいけ、老いても物質に、執着のつよい人だった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかでも貨殖かしょくに関する態度を初めて聞き知った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
貨殖かしょくの道にうとかったからで。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)