豈図あにはか)” の例文
豈図あにはからんやぎつけていたばかりでなく、道楽者の名を博しているSの口吻こうふんから察すると、奴等は私たちを夫婦であるとは信じないで
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
新撰組というから、鬼をまなすで食うような豪傑ばかり集まっているのかと思っていると、豈図あにはからんやその大将が、歳どんであろうとは……
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
只管ひたすら写真機械をたづさへ来らざりしをうらむのみ、いよ/\溯ればいよ/\奇にして山石皆凡ならず、右側の奇峰きばうへて俯視ふしすれば、豈図あにはからんや渓間けいかんの一丘上文珠もんじゆ菩薩の危坐きざせるあり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
間もなくテーブルへ清涼酒リャビノフカが出た、それはノズドゥリョフの話では、まるでクリームそのままの味だとのことであったが、豈図あにはからんやツンツンと焼酎の臭いが鼻を刺した。
五日早朝怪しきもの一人召捕りとくと取調べ候処、豈図あにはからんや右徒党一味の者故、それより最早時日を移し難く、速かに御守護職所司代にこの旨御届申上げ候処、速かにお手配に相成り
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)