譎詐きつさ)” の例文
に彼の頼める鰐淵直行の如きは、彼のからうじてそのなかばを想ひ得る残刻と、つひに学ぶあたはざる譎詐きつさとを左右にして、始めて今日こんにちの富を得てしなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
変現出没譎詐きつさ縦横を以て外交の能事了れりとなすの時代は既に去れり。いなくの如きは少くとも大自覚の磐上に理想の玉殿を建設せむとする者の採用すべき路にあらず。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
必ず曲知小慧せうけいの俗吏を用ひ巧みに聚斂しうれんして一時の缺乏に給するを、理財に長ぜる良臣となし、手段を以て苛酷に民を虐たげるゆゑ、人民は苦惱に堪へ兼ね、聚斂を逃んと、自然譎詐きつさ狡猾かうくわつに趣き
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
この点に於ては彼は一も二も無く貫一の師表たるべしといへども、その実さばかりの残刻と譎詐きつさとをほしいままにして、なほ天におそれず、人にはばからざる不敵の傲骨ごうこつあるにあらず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
貫一は彼の如く残刻と譎詐きつさとに勇ならざりけれど、又彼の如く敬神と閉居とにきよならず、身は人と生れて人がましく行ひ、いつかつて犯せる事のあらざりしに、天はかへりて己を罰し人は却りて己をいつは
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)