西石垣さいせき)” の例文
其後夫婦連れで例の西石垣さいせき千本ちもとへお茶漬を一度食べに行つた時も、同じく細君の帶の間におさめてあつた蟇口の中から支拂はれたのであつたが
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
七条新地はししたに女郎屋を、三条の方に鳥屋を、西石垣さいせきに会席料理屋を、先斗町ぽんとちやうに芸者屋をといふ風に、次から次へと新しい妾を蓄へては、その度毎に新しい店を一つづつもたせた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
瓢亭ひょうていだの、西石垣さいせきのちもとだのと、このひとが案内をしてくれたのに対しても、山谷さんや浜町はまちょう、しかるべき料理屋へ、晩のご飯という懐中ふところはその時分なし、今もなし、は、は、は、笑ったって
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あいつが君、唐崎の松に失望してねえ、もう己と一緒に散歩に行くのは厭やださうだ。それから君、唐崎なんかへ行くよりは西石垣さいせきの何處とかへお茶漬を
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
五条に鳥屋、西石垣さいせきに会席料理屋、木屋町に席貸し、先斗町に芸者屋、それから四条に宿屋といふ風に次々と手を拡げ、妾の四五人も持つて、それぞれさういふ商売をやらせるといふ豪勢さで
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
そうですよ、宿は西石垣さいせきのなにがし屋に取ってあったのですが、宿では驚いていたでしょう。路之助の馳走になりつづけで、おのぼりの身は藻抜の殻で、座敷に預けたのが、擬更紗まがいさらさの旅袋たった一つ。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)