西曲輪にしぐるわ)” の例文
西曲輪にしぐるわの方で、人々のわめきが起った。風の中を、みだれ飛ぶ松明たいまつは、ただ事ではない。大勢の足音や人影の一部は、こっちへも近づいてくる。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西曲輪にしぐるわの廊下から武者走むしゃばしりの方へ、家中のもの誰彼となく、一散になだれだした。その物々しさが、天変のあった直後だけにことさらただごとでなく思われる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西曲輪にしぐるわ東曲輪ひがしぐるわとの往来さえ舟やいかだでするほどだった。城兵は、染戸そめどの染板数百枚をあつめて、軽舸はしけを作った。水上戦のとき、それに載って寄手の大船へ攻めかかった勇者もある。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西曲輪にしぐるわの客殿は、“梅の丸”とよばれている。庭前庭後、すべて梅園だからであった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、大殿おおとのに召されて、西曲輪にしぐるわへお越しになりました」
と阿波守はやぐらを降りて、徳島城の西曲輪にしぐるわへ向った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)