うつろ)” の例文
菊はまだうつろわずして狂うものは狂いそめ、小菊、紺菊の類は、園の此処彼処にさま/″\な色を見せ、紅白の茶山花さざんかは枝上地上に咲きこぼれて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
下なるはいよいよ細りていつしか影も残らず消ゆれば、残れる一片ひとつはさらに灰色にうつろいて朦乎ぼいやりと空にさまよいしが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
やがて日落ちて黄昏たそがれ寒き風の立つままに、二片ふたつの雲今は薔薇色ばらいろうつろいつつ、上下うえしたに吹き離され、しだいに暮るる夕空を別れ別れにたどると見しもしばし
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
私は先生の心中が思われて、つらくてなりません。昔先生が命をかけてれられた美しい素直なソフィ嬢は、斯様こんな心のうつろった老伯爵夫人になってしまわれたのでしょう乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
園養えんようのものには、白、桃色、また桃色に紫のしまのもあるが、野生のれは濃碧色のうへきしょくに限られて居る様だ。濃碧がうつろえば、菫色すみれいろになり、紫になる。千鳥草と云えば、直ぐチタの高原が眼に浮ぶ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)