裂罅れっか)” の例文
やがて衝立岩ついたていわの真下辺りで、二ノ沢の落込む少し上で、雪渓はくびれたようになって幅一メートル半ほどの裂罅れっかが雪渓を上下に切り裂いている。
一ノ倉沢正面の登攀 (新字新仮名) / 小川登喜男(著)
創傷を中心に細い朱線を引いて、蜘蛛糸のような裂罅れっかが縫合部を蜒り走っているが、何れも左右の楔状骨に迄達している。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「それが目は酸漿あかかがちなして」とあるのは、熔岩流の末端の裂罅れっかから内部の灼熱部しゃくねつぶが隠見する状況の記述にふさわしい。
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
塑造そぞう的物質になって、その通過する地床の傾斜に、少しでも変化があれば、氷雪はそれに応じて裂罅れっかを作ること、渓流の「渦巻き」が、いつ見ても一つところに
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
してみれば結局私の生命は有機化されていないということに帰着せねばならない。私の生命は全一ではないのだ。分裂してるのだ。知識と情意とは相背いてる。私の生命には裂罅れっかがある。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
〕習ったというのは節理せつりだな。節理なら多面ためん節理、これを節理と云うわけにはいかない。裂罅れっかだ。やっぱり裂け目でいいんだ。壺穴つぼあなのいいのがなくてこまるな。少し細長いけれどもこれで説明せつめいしようか。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
岩石に関してはまだ皺襞しゅうへき裂罅れっかの週期性が重要な問題になるが、これはまた岩石に限らず広く一般に固体の変形に関する多種多様な問題と連関して来るのである。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これが裂罅れっかを温泉の通った証拠だ。玻璃蛋白石はりたんぱくせきの脈だ。
台川 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
紅海こうかいは大陸の裂罅れっかだとしいて思ってみても、眼前の大自然の美しさは増しても減りはしなかった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これが裂罅れっか温泉おんせんの通った証拠しょうこだ。玻璃蛋白石はりたんぱくせきみゃくだ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一書には鐘を鋳た後に羊の血をもってその裂罅れっかに塗るという意味に使われているそうである。
鐘に釁る (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
裂罅れっかだ。やっぱり裂け目でいゝんだ。
台川 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし黄銅の場合にこの種の単分子皮膜が固体面に沿うて自由に伸展し、吸着した湿気やガスを駆逐しつつ裂罅れっかを埋めるかどうかは実験しなければ確かなことはわからない。
鐘に釁る (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)