衣裄いこう)” の例文
夫人の顔は、コオトをかけた衣裄いこうの中に眉暗く、洋燈ランプの光のくまあるあたりへ、魔のかげがさしたよう、円髷まげの高いのも艶々つやつやとして、そこに人が居そうな気勢けはいである。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞澄ききすまして、里見夫人、もすそを前へさばこうとすると、うっかりした褄がかかって、引留められたようによろめいたが、衣裄いこうに手をかけ、四辺あたりみまわし、向うの押入をじっと見る、まぶたさっと薄紅梅。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)