行幸ぎょうこう)” の例文
行幸ぎょうこう御幸ごこうを仰ぐのはめずらしくない都の男女だったが、朝覲ちょうきん行幸みゆきと知って「……今日ばかりは」の、ひしめきらしい。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど去年の秋の大演習を控えて、行幸ぎょうこうを仰ごうという矢先だったもんだから県下一般、大狼狽を極めたらしいんだが、ソイツが立消えになった。
無系統虎列剌 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
遠く寛永かんえい時代における徳川将軍の上洛と言えば、さかんな関東の勢いは一代を圧したもので、時の主上ですらわざわざ二条城へ行幸ぎょうこうせられたという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうか、そんなおもしろい虫がいるなら、わしも見に行こう」とおっしゃって、すぐにお宮をお出ましになり、奴里能美ぬりのみのおうちへ行幸ぎょうこうになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
宋の高宗帝が金の兵に追われて、揚子江を渡って杭州に行幸ぎょうこうした際のことであった。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
眼鏡めがねを掛けて新聞を見ていた父はこういった。父は黙って自分の病気の事も考えているらしかった。私はついこの間の卒業式に例年の通り大学へ行幸ぎょうこうになった陛下をおもい出したりした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう高宗帝こうそうていきんの兵に追われて、揚子江ようすこうを渡って杭州に行幸ぎょうこうした際のことであった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今度の行幸ぎょうこうはその東京をさしての京都方の大きな動きである。これはよほどの決心なしに動かれる場合でもない。一方には京都市民の動揺があり、一方には静岡しずおか以東の御通行さえも懸念けねんせられる。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)