螺鈿鞍らでんぐら)” の例文
螺鈿鞍らでんぐらをおいた駒の背にとび乗り、八文字に開かれている中門から大手の土坡口へ、鏘々そうそうと、よろい草摺くさずりや太刀の響きをさせて駈け出して来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一ト目で佐々木家とわかる道誉好みの“山吹いろ一色”の行列は、やがて華奢かしゃな粧いをこらしたあるじ螺鈿鞍らでんぐらの馬上にみせて佐女牛から練って行った。
金砂子きんすなご覆輪ふくりんを取った螺鈿鞍らでんぐらに、燃ゆるような緋房ひぶさをかけ、銀色のくつわ紫白しはくの手綱。——甚内の眼は射られた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、彼方から女の影が夕靄ゆうもやにつつまれてくる。女は、羅衣うすもの被衣かつぎをかぶり、螺鈿鞍らでんぐらを置いた駒へ横乗りにって、手綱を、鞍のあたりへただ寄せあつめていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見事な螺鈿鞍らでんぐらに、華やかな口輪を噛ませ、紫に白をい合わせた手綱を掻把かいとり、むこ殿信長は、何か嬉々ききと、うしろの家臣を振り向いて、話しかけながら見えたのであった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)