蝋燭立ろうそくたて)” の例文
三四郎は静かな部屋へやの中に席を占めた。正面に壁を切り抜いた小さい暖炉だんろがある。その上が横に長い鏡になっていて前に蝋燭立ろうそくたてが二本ある。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茂次の部屋には、仮の仏壇が作ってあり、さらし木綿で包んだ遺骨の壺が、その中に二つ安置してあった。蝋燭立ろうそくたてかね、線香立、花立なども、安物だがひととおりそろっていた。
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ベルリンの美術館などの入口の脇の壁面に数寸角の金属板が蝋燭立ろうそくたてかなんかのように飛出しているのを何かと思ったら、入場者が吸いさしのシガーを乗っけておく棚であった。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
夏だったから座敷が開放してあるところへ、ガラスのホヤのついている蝋燭立ろうそくたてを二つばかり並べた真中に床の前に胡坐あぐらをかいて、実にいい機嫌で可成夜更けまで何か滔々とうとうとやっていた。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
あるじの大蔵は、蝋燭立ろうそくたてを、長持の上において、ひじをかけた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)