虎徹こてつ)” の例文
と云い、刀屋から、虎徹こてつだと云って買わせられた、その実、宗貞の刀の柄を叩いてみせた。すると総司は却って不安そうに云った。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
勇は刀架かたなかけに秘蔵の虎徹こてつを載せて、敷皮の上に、腕をこまねき端然と坐っていたが、兵馬を見る眼が、今日はいつもよりけわしい。
「何だとッ! もう一遍いってみろッ、今宵の虎徹こてつは血に飢えている、目に物見せてくれるぞッ!」
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
『これはすばらしい。国広くにひろ康継やすつぐ虎徹こてつ水心子すいしんし、それから近頃の直胤——なんどにも劣らぬ作だ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奎堂 ははあ、陸奥守包保むつのかみかねやす左文字大銘ひだりもじだいめいに切ってござろうな。左陸奥守——いたって吉相。常用差しつかえござらぬ。(つぎの刀を受け取って)うむ、虎徹こてつが出ましたな。これも善相。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
芹沢はこういって近藤、土方の面を意地悪く見廻すと、勃然むっとしたのが近藤勇です。愛するところの抜けば必ず人を斬るという虎徹こてつの一刀を引き寄せて
虎徹こてつだよ——刀は虎徹に限ると言っている、近藤は虎徹が好きらしい、虎徹もまた近藤に好かれそうな刀だ」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)