蘭方らんぽう)” の例文
常木鴻山こうざんと一緒にいたので睨まれたのだろうが、もうよい加減にして貰いたいな。心煩しんぼんという病気になる、蘭方らんぽうでいえば神経衰弱……
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それで浅草の浄念寺へ、蘭方らんぽうの医者とかってのを伴れてゆき墓を掘り起こして骨をしらべたっていうわけです」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「八、こいつは俺たちだけじゃ手におえないよ。この近所に、蘭方らんぽうの良いお医者は居ないのか」
恐らく我国の薬種やくしゅで無からう、天竺てんじく伝来か、蘭方らんぽうか、近くは朝鮮、琉球りゅうきゅうあたりの妙薬に相違ない。へば房々ふさふさとある髪は、なんと、物語にこそ謂へ目前まのあたりいたらすそなびくであらう。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「それで馬場氏は先生を自分の後継者にするつもりでいたところが、先生はそれを嫌って門下をはなれ、長崎へいって蘭方らんぽうの医学をまなばれたということだ」
登はこばんだ。彼は蘭方らんぽう医学の各科をまなんだが、特に本道(内科)ではずいぶん苦心し、自分なりに診断や治療のくふうをした。それは彼自身のものであり、彼だけの会得した業績なのだ。