藺莚いむしろ)” の例文
ほんの板囲いたがこいに過ぎない仮屋の藺莚いむしろのうえではあるが、白いふすまは厚くかさねられ、片隅には、職人図を描いた屏風びょうぶ一張ひとはり立てられてあった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは縁側えんがわもなかった。へやには藺莚いむしろのようなきいろくなった筵を敷いてあった。武士の眼は再びゆくともなしに仏壇の上の仏像に往った。仏像の左の眼はつぶれていた。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
部屋は三十畳も敷ける広さで、藺莚いむしろが敷いてあり、大刀どす、手槍、鈎棒かぎぼうなどが、手を伸ばす所にいくらでも備えてある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようやく、寝床を離れること二尺ばかり、藺莚いむしろのうえに、半兵衛重治は、きちと坐った。何たる肩のとがり、膝の薄さ、また両手の細さ。女にも見まほしい姿だった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)