藪下やぶした)” の例文
藪下やぶしたの狭い道に這入る。多くは格子戸の嵌まっている小さい家が、一列に並んでいる前に、売物の荷車が止めてあるので、体を横にして通る。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
男の名は角三かくぞうといい、年は二十五。住居は小石川音羽おとわの五丁目、藪下やぶしたと呼ばれるところにあった。
藪下やぶしたから根津神社へ抜ける広い原に、夏期なつば真菰まこもの生いしげる小さな沼がある。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
団子坂上から南して根津権現の裏門に出る岨道そばみちに似た小径こみちがある。これを藪下やぶしたの道と云う。そして所謂いわゆる藪下の人家は、当時根津のやしろに近く、この道の東側のみを占めていた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)