薩州さっしゅう)” の例文
いつのまにかこの街道を通り過ぎて行った薩州さっしゅう、長州、土州、因州、それから彦根、大垣なぞの東山道軍の同勢の方へ心を誘われた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「……それから、お侍衆の噂では、いよいよ、公方討くぼううちのいくさおこって、長州様も、土州様も、薩州さっしゅう様も、また芸州様もこんどは……」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅宿帳には薩州さっしゅう人と記してある由。もし、維新前にかかることあらば、必ず天狗の文字と定められ、その老人は天狗とみなされたであろう。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
薩州さっしゅうの国守からもらった茶色の綿入れ着物を着ていたけれど、寒そうであった。座につくと、静かに右手で十字を切った。
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
因州いんしゅう薩州さっしゅうの兵三千、大砲二十門を引いて、東山道軍と称し、木曾路から諏訪へ這入り、甲府を襲い、甲府城代佐藤駿河守殿をおさめ、甲府城を乗取ろうとしているのじゃ。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小玉銀五粒と二朱負けたというのだから、これは明らかに博奕ばくちのことで、今でも信州の大河原おおがわらの奥などでは、そういう無教育な鳴き方をするように伝えられる。同じ頃にまた薩州さっしゅうの方では
因州なぞの女中方や姫君から薩州さっしゅう簾中れんちゅうまで、かつてこの街道経由で帰国を急いだそれらの諸大名の家族がもう一度江戸への道を踏んで
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薩州さっしゅうのだ。……そうだ、薩摩の春日丸かすがまるだ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、この方面に総督をまもって行く役目は薩州さっしゅう、長州、土州、因州の兵がうけたまわる。それらの藩から二名ずつを出して軍議にも立ち合うはずである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今じゃ薩州さっしゅうでも、土州としゅうでも、越前えちぜんでも、二、三そうぐらいの汽船を持っていますよ。それがみんな外国から買った船ばかりでさ。十一屋さんは昌平丸しょうへいまるという船のことをお聞きでしたろうか。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)