薄光うすあかり)” の例文
枕頭まくらもとの障子には、わづかに水を撒いた許りの薄光うすあかりが、声もなく動いて居る。前夜お苑さんが、物語に気を取られて雨戸を閉めるのを忘れたのだ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
主人あるじは便所の窓を明けたが、外面そとは雨でも月があるから薄光うすあかりでそこらがおぼろに見える。窓の下はすぐ鉄道線路である。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
懵乎ぼうつとして目をくと、無際限の世界が、唯モウ薄光うすあかりの射した淡紅色の世界で、じつとして居ると遙か/\向ふにポツチリと黒い点、千里の空に鷲が一羽、と思ふと、段々近いて来て、大きくなつて
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)