蒼空そうくう)” の例文
結婚の贈物が天使からささげられてるような気がした。彼女の魂はマリーヌのレースの翼をつけて蒼空そうくうのうちに舞い上がっていた。
奄美の島では蒼空そうくうの信仰はまだ起こらず、神山の霊験はなお大きかった故に、こういう説明も可能であったので、或いは海を渡ってきて山に入って行く鼠の群が
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
リアリズムの用心深い足取りで生活の架け橋を拾い踏み渡りながら、眼は高い蒼空そうくうの雲に見惚みとれようとする。ゆがんだポーズである。この矛盾むじゅんが不思議な調子で時代を彩色いろどる。
限界もなき蒼空そうくうを住家となし、自在に飛揚し、自在にさえずり、食を求めてついばみ、時を得て鳴き、いまだ人間の捕らえて、籠裏ろうり蟄居ちっきょせしむるがごときことあるを知らざりき。
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「昼間は物騒で、雨戸を閉ざすべきである。りっぱな紳士は、蒼空そうくうが星を輝かす時に、おのれの精神を輝かすのである。」
絶対なるものはその厳酷さによって、人の精神を蒼空そうくうに向かわしめ、無限なるもののうちに浮動せしむる。夢想を生むには、独断にくものはない。
平民の画家なるランクレーは蒼空そうくうけ上る市民らをうちながめ、ディドローはそれらの情愛をとらえんとて手を伸ばし、デュルフェーはそれにゴールの祭司をささえしめた。
事物の組成は大異変なしにすますことはできない。彗星すいせいの出現を見れば、天自身も名俳優を必要としてるのだと思えてくる。意外の時に神は、蒼空そうくうの壁上に一つの流星を掲げる。
蒼空そうくうのうちにおける彗星すいせいの運動を一滴の水のうちにおける滴虫の旋転に従属させる。
愚蒙ぐもう欺瞞ぎまん憎悪ぞうおや虚栄や悲惨、などの上にはるかにそびえ、蒼空そうくうのうちに住み、あたかも高山の頂が地震を感ずるのみであるがように、ただ宿命の深い地下の震動を感ずるのみである。
姉の方もまた自分の夢想を持っていた。ある御用商人、ある金持ちで恰幅かっぷくのいい糧秣係りょうまつがかり、あるいかにもお人よしのおっと、ある成金、またはある県知事、そういうものを蒼空そうくうのうちに夢みていた。