蒸風呂むしぶろ)” の例文
一、二頁見ているうちに急に全身が熱くなって来た。蒸風呂むしぶろにでもはいったようで室内の空気がたまらなくしつけるように思われた。
病中記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
するともう、さっそくに蒸風呂むしぶろのいちばん上のたなにねていました。ところで、着物を着たなり、長ぐつも、うわおいぐつもそのままでねていました。
そのころの湯殿というのは、みなむろになっている蒸風呂むしぶろであった。外のたき口で、火がハゼると、たちまち室中むろじゅうが白い湯気に満ち、中の温度は上昇してくる。
俵はほとんど船室の出入口をも密封したれば、さらぬだに鬱燠うついくたる室内は、空気の流通をさまたげられて、窖廩あなぐらはついに蒸風呂むしぶろとなりぬ。婦女等おんなたち苦悶くもん苦悶くもんを重ねて、人心地ひとごこちを覚えざるもありき。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)