葱畠ねぎばたけ)” の例文
御茶漬すぎ(昼飯後)は殊更温暖あたゝかく、日の光が裏庭の葱畠ねぎばたけから南瓜かぼちやを乾し並べた縁側へ射し込んで、いかにも長閑のどかな思をさせる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、ぼんやり気がついて見ると、いつか家のうしろにある葱畠ねぎばたけの前にしゃがんだまま、せっせと葱に火をつけていた。のみならずわたしのマッチの箱もいつかあらましからになっていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
垣根の傍に花をんでいた鶏は、この物音に驚いて舞起つもあれば、鳴いて垣根の下をもぐるもあり、手桶の水は葱畠ねぎばたけの方へ流れて行きました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は春先まで枯葉の落ちないあの椚林くぬぎばやしを鳴らす寒い風の音を聞いたり、真白に霜の来た葱畠ねぎばたけながめたりして、うちの外を歩き廻る度に、こういう地方に住むものでなければ知らないような
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)