葉鉄ブリキ)” の例文
旧字:葉鐵
開放あけはなした次の間では、静子が茶棚から葉鉄ブリキの罐を取出して、麦煎餅か何か盆に盛つてゐたが、それを持つて彼方むかうへ行かうとする。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
四角な葉鉄ブリキを火の上に置いて鶏をのせ、その上に銅の深鍋をひっくりかえしにかぶせて、一時的のオーヴンを設け、銅鍋の底で炭火を起し、鶏がうまくロースト出来る迄
葉鉄ブリキ落しの灰の濡れた箱火鉢のへりに、じりじりと燃える陰気な蝋燭を、舌のようになめらかして、しょんぼりとあおざめた、髪の毛のおどろなのが、この小屋の……ぬしと言いたい
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出からしになつた急須の茶滓を茶碗の一つに空けて、机の下から小さい葉鉄ブリキの茶壺を取出したが、その手付がいかにもものぐさうで、私の様な気の早い者が見ると、もどかしくなる位緩々のろのろしてゐる。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)