莫連ばくれん)” の例文
蟹のお角という女は、だんだん調べてみると札付ふだつきの莫連ばくれんもので、蟹の彫りものは両腕ばかりでなく、両方の胸にも彫ってあるのです。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とこっちも莫連ばくれんのお吉、うそぶくように鼻でいい、蜘蛛くもいとに煤が紐のようにたかり、無数に垂れている天井へ、濃化粧の白い顔を向けた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それがまた市場マアケットへ出て欧羅巴ヨーロッパへ逆輸入される頃には、いかに彼女らが海一〇〇〇山一〇〇〇の物凄い莫連ばくれんになってるかは想像に難くあるまい。
かつて木部孤笻にしてほどもなく姿をくらましたる莫連ばくれん女某が一等船客として乗り込みいたるをそそのかし、その女を米国に上陸せしめずひそかに連れ帰りたる怪事実あり。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それは大正七年でしたが、其前年のくれに「腫物」の女主人公、莫連ばくれんひろも亡くなりました。お広さんは石山新家を奇麗につぶして了うた後、馴染なじみの親分と東京に往って居ました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
越後生まれの大莫連ばくれん、侍衆か金持ちか、立派な客でなかったら、座敷へ出ぬという権高者けんだかもの、なるほどお前も歌にかけたら、街道筋では名高いが、身分は劣った馬方風情、どうして懇意になったものか
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)