茶匙ちゃさじ)” の例文
敏子ガ紅茶ヲ入レテ出シタガ、コノ間ノクルボアジエガマダ四分ノ一残ッテイルノガ床ノ間ニ置イテアッタノデ、茶匙ちゃさじニ一杯ズツラシテススメタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼女は二度目の成功を期待しながら、執念深く同じ行為を繰返して、再度茶匙ちゃさじを床に落した。銀製の光った匙は、床の上でねあがり、鋭く澄んだ響を立てた。
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
身につけるものではないが、例えばマイヨオルの彫刻はせいぜい銅か土のかたまりであり、「信貴山縁起しぎさんえんぎ」は一巻の長い紙であり、名工の茶匙ちゃさじは一片の竹であるに過ぎない。
忽ちのうちに金に詰まり初め、御書院番のお役目の最中は、居眠りばかりしていながらに、時分を見計らっては受持っている宝物棚の中から、音に名高い利休の茶匙ちゃさじ小倉おぐらの色紙を初め、仁清にんせい香炉こうろ
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)