芸妓おんな)” の例文
旧字:藝妓
お喜代が、云い出したので、露八が、三味線をもち、芸妓おんなが唄った。また、芸妓の三味線で、露八がしぶい声で荻江節おぎえを唄った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
店先を出て行くと、男は、中折帽のやまへ手をやりながら、往来を見わたして、向うの角に見えた豆菊と芸妓おんなの方へ、大股にあるき出した。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまを取って、白い素足が、ひらひらと五、六人も跳び乗ってしまった。大きく揺れる屋形の周りで、芸妓おんなたちはキャッキャッと、はしゃいだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露八は、心のうちでもだえた。時々、淋しそうに、ぽかんとした。芸妓おんなたちは、馴れてくると、露八の膝にもたれたり、大きなもので、酒をいた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
椀屋徳三郎というのは雲霧の遊び名前で、深く、馴染んだ芸妓おんなではないが、先ではよく覚えていたらしいのである。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太陽のもと、ことに埠頭ふとう船渠ドック、荷馬車、お茶場工場などの、騒音とほこりと人間の奔影ほんえいとが錯綜さくそうと織られている横浜はまの十字街を、ゆうべの芸妓おんなや、雛妓おしゃくを引っぱって
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豆菊とひとりの若い芸妓おんなは、しばらく、街路樹のもとにたたずんでいたが、通りかかる外国人に、ステッキでされたり、顔を知っている新聞社の原稿給仕が、わざと自転車を向けて来たり
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょいと振り向くと、雑鬧ざっとうの中を、泳ぎ抜けてきた手古舞の芸妓おんな
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)